2009年1月18日 (日)

早稲田ビジネススクール大滝令嗣氏と「音力発電」速水浩平氏の講演

テクノ未来塾のセミナーを新年早々受けてきました。

・早稲田ビジネススクール 大滝令嗣氏「グローバル時代の日本人エンジニアの役割」

東北大学工学部から、カリフォルニア大学サンディエゴ校でPh.Dをとり、東芝で半導体の研究をした後、人事・組織コンサルタントに転じてシンガポール経済開発庁のボードメンバーの経験もあるという面白い経歴の方です。

 コンサルタントの方らしく、講演では戦略シナリオの重要性をおっしゃっていて、カリフォルニアワインの普及戦略や日本の金融業の10年後を題材にして戦略マップについて解説してました。演習で「日本の製造業の10年後」を題材に戦略マップを作りました。縦軸に人材の質、横軸に製造コストをとって作ってみましたが、うまくできたでしょうかね・・。

 後半は企業の開発競争がグローバルになった現在、日本の企業やエンジニアはどうあるべきかという話になりました。日本の企業の問題点は、多国籍企業のマネジメントが不十分であるということでした。企業の国際化は、インターナショナル→マルチナショナル→グローバル→トランスナショナルと進んでいくということで、グローバル以上のマネジメント能力は、欧米企業のほうが優れているということでした。日本が国際的に評価されているのはエンジニアリングの力であるということで、日本のエンジニアは経営の力をつけて「グローバルスーパーエンジニア」として「後部座席から、運転席に移って」リーダーシップをとるべきだというお話でした。

 どちらかというと大企業の国際競争を念頭に置いたお話であり、激しい国際競争の中でぱっとしない半導体業界に身をおくものとして、大滝氏のお話は共感できるものがありました。

 ただ、マネジメントになると、どうしても技術の現場からは遠くなるもので、大滝氏のおっしゃるのは「スーパーエンジニア」というより、「エンジニア出身の優秀な経営者」が望ましいということじゃないのかなーとちらと思いました。

 それと、最初のほうで資源のない小国という意味で日本と似ているシンガポールについて述べられていて興味深かったのですが、

・どうしてシンガポールは強烈な監視社会にする必要があったのか

・シンガポールの優れた国家運営戦略はリー・クアン・ユーのある種の独裁政治の効果が大きいと思うが、日本の国家運営能力を高めるにはどうしたらいいのか

という疑問は聞けずじまいでした。機会があったら聞いてみたいと思います。

音力発電 速水浩平社長 「研究開発から社会インフラに貢献する実践へ」

去年12月に渋谷ハチ公前で、「発電床」の実証実験があったのをご記憶にある方もいると思います。

渋谷・ハチ公前に埋め込み型「発電床」-通行人の振動で発電(シブヤ経済新聞)

踏むと振動で発電できるというもので、僕も喜んで踏んでました・・。

この「発電床」を開発したのが、大学発ベンチャーの「音力発電」の創業社長の速水浩平氏で、現在慶応大学の博士一年の学生です。

講演では、「音力発電」で開発している振動発電技術や音力発電技術を紹介くださいました。音力発電技術のプロトタイプは氏が大学4年のときに開発し、修士1年のときに会社を作り、現在では複数の大手企業、公的機関と共同プロジェクトをしており、たとえば首都高の五色桜大橋に取り付けられ、イルミネーションの動作電力の一部として利用されているそうです。

ディスカッションの時間が長めにとってあり、いろいろな企業の技術者とのディスカッションが非常に面白かったです。

聞いた話をかいつまんで記すと、

・音力発電のアイデアは、小学校のころから温めていた。

・会社を作ることは、高校時代から考えていた。

・音で発電することは、効率が悪くて実現性が低いということが定説であったが、開発を進めて効率改善することで定説を覆し、企業の技術者の見かたを変えることが出来た。

・最初から、わかりにくい技術をわかりやすい形で見せることに心を砕いた。技術をどのように商品化するかということも考え抜いた。

・ビジネスとするにあたって、人とのコミュニケーション、ネットワーク構築を重視した。

・会社は総勢5人と小さいが、様々な会社と協力関係を結ぶことで無理なく事業を進められるようにしている。

・会社は研究開発型ベンチャーとしてやっている。振動発電機はブラックボックスとして非公開。試作もパーツごとに別会社に出している。振動板やストッパーなどノウハウの部分も多いので、リバースエンジニアリングをされてもそう簡単にまねできないと考えている。

・契約が対等なら大企業が有利なので、知財に関してはベンチャー側に有利な条件にしてもらっている。

・首都高全体に振動発電機を設置すると、現在の発電効率のもので火力発電所2~3基分の試算になる。

・不要なエネルギー放射である「振動」を利用するので究極のエコ。部材のリサイクルプロセスも考慮している。

・振動エネルギーを電気に変えるので、免震やダンパーといった用途にも使える。

・難民キャンプなど、発電施設のないところでの人道支援にも使ってみたい

ベテラン技術者のどんな質問も具体的な数字を挙げて答えるところに、自分の事業に対して多方面から徹底的に検討していることが伺えました。

ブレークスルーをできる優れた研究開発能力といい、ベンチャーを無理なく運営するマネジメント能力といい、人の話をよく聞きつつ自分の意見を反映させるコミュニケーション能力といい、ビジョンの大きさといい、ビジネスプランニング能力といい、24~25歳の学生がここまでの能力を身につけられるものなのかと、刺激を超えてショックを受けました。

いやー、世の中には、すごいやつもいるものですねえ・・。

世界のどこに出しても通用するという点では、まさに大滝氏のおっしゃる「グローバルスーパーエンジニア」ではないかと思います。

速水さんには是非世界を舞台に活躍して欲しいと思います。

教授の名前を借りて、技術先行でビジネスさっぱりという大学発ベンチャーも多い中、技術とビジネスが高い水準でバランスしている速水氏の「音力発電」はとても有望なベンチャーだと思います。とても期待しているので、是非がんばって欲しいです!

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2008年10月30日 (木)

池田清彦さんのお話

テクノ未来塾のセミナーで、早稲田大学教授の池田清彦さんのお話を聞いてきました。

池田さんは、環境問題、特に地球温暖化問題について批判をしている論客の一人です。

TVにも出演してて、結構有名な方のようですが、お会いするまで全然知りませんでした。すいません・・。

主張としては以下のとおり。

・温暖化というが、観測場所の環境が変われば温度もすぐ変わる。正確な測定は無理。

・温度が上昇しているのは都市で、それはヒートアイランド現象であり温暖化ではない。

・たとえ大気中のCO2が2倍になっても、温度上昇は1.5℃程度。地球の歴史で見れば、二酸化炭素は逆に減ってきている。

・京都議定書を日本だけ守っても中国とアメリカが守らなければ、温暖化に対する意味はない。

・本当に重要な問題は、エネルギー問題。日本は京都議定書遵守に数兆円も予算を使うより、代替エネルギー開発に予算を振り向けるべきだ。

 現在の環境問題の主流の主張とはかなり異なった主張をしているので、批判も多い方でありますが、こういう少数意見は、主流意見を相対化させてくれるので、何事にも貴重な存在だなとは思います。

 池田さんの話から感じたのは、物事をひとつの断面のみで捉えるのではなく、常に問題の本質を見失わず、思考停止しないことは大事だなということです。

また、環境問題をCO2排出問題だけに還元してしまうことの危うさですよね。そういう物事の単純化には政治的な要素が入りやすくなるので、本質とはずれたおかしな問題設定になる可能性が高いということなのだと考えています。

日本は、CO2排出削減に骨身を削って努力するより、代替エネルギーを開発するほうが優先度が高いのではないかというのは同感です。
なんだかんだいってエネルギー輸入がストップすれば、日本は滅びるのは間違いないので、省エネルギー社会を目指す一方、エネルギー開発技術を磨いて死なないようにしなくてはならないと思います。

自分は、地球環境を保全しなくてはならないというのは、つまりは人間の住みやすい地球環境を保たねばならないということだと考えています。今の自分達がぜいたくに暮らせればいいんだ!という態度で地球の資源を無制限に浪費する社会は、完全市場仮説を前提にしたアメリカ金融ビジネスと一緒で、プレイヤーの規模が大きくなってプレイヤーの行動が環境そのものに影響を及ぼすようになると、環境変動の予測がつかなくなり、最後は自滅することになると思っています。だから、CO2問題はさておき、地球環境へのインパクトが小さい社会スタイルを目指すのは大事なのではないかと感じております。
まあ、途上国の人たちに子供を生むなとはいえないけれど人口爆発は困るとか、いろいろと難しいんではありますが・・

池田さんのようにマイナーな主張をされている方は、日本社会についてまた違った感じ方をされていて(マスコミの報道姿勢など)、非常に示唆に富むお話でした。

それと、とにかく池田さんは話が面白い!講義も面白かったし、その後の飲み会での雑談もすごく面白かったです。話が面白いというのはそれだけでも価値がありますね。話が面白い大人になりたいものです。

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2006年11月19日 (日)

三鷹光器の中村社長のお話

を聞いてきた。
この会社は、天体望遠鏡や医療光学機器では有名な企業なのですが、以前読んだ創業者の会長のインタビューが面白く、関心をもっていたのです。

息子の社長も負けず劣らず面白かった。
企業規模はいわゆる中小だけど、アイデアで大手に優る実績を上げてきただけあって、とてもユニークで熱い。
例えば、製品は殆ど超精密機器なのですが、なるべくコンピュータを使わずにシンプルに制御するアイデアを考えるのです。社長曰くは、コンピュータに使用する半導体は環境によくない物質を使用しているから、それをばらまくような製品にはしたくないとのこと。半導体屋には耳が痛いですが・・
それはそうと、同じ機能を実現するならなるべくシンプルな仕組みにするというのは、技術的に利にかなった考え方です。

あと、人材に関する考え方もとても面白かった。入社試験でランプの絵を書かせるというのは有名な話なのですが、背景を入れるか入れないか、影をどうするか、などなど書き方で適性が判断できるそうです。そして、業務での報告やアイデア提案は基本的に手書きの絵でやるそうです。文字だと各々イメージが違うけど、絵だとイメージを一致させやすいからだそうです。
また、入社して3ヶ月は機械の刃を研がせたり、五寸釘を木材に打ち込んだりの訓練を行うそうです。そうやって、若手のうちは徹底的に現場の感触を叩き込んで、設計と出来上がってくるモノのイメージを完全に一致させるような訓練を行うそうです。そうすると、構想段階で実現可能なアイデアが浮かんでくるようになるそうな。なんとCADを使っていいのは、課長級以上だそうですw。
半導体の世界で製造部門と設計部門の乖離が問題になっていたりしますが、こんなところにヒントがありそうですね。

社長が潰したい会社はソニーと任天堂だそうで、理由はゲームは子供の手先の訓練の機会を奪うからだそうです。優れた手術医が減ってきているそうで、教育も含めて危機感を感じているそうです。

「僕がやってる半導体は、作っているときは本当にものづくりなのですが、製品はゲームに使うチップです。ものづくりすればするほどバーチャル世界を広げる結果になるのですがどうすればいいですかね?」
と質問したら、
「それならその素晴らしい設計技術を、私のやっているような環境分野の機器開発に応用しましょう」
と、ご自身の考案された太陽発電システムについて熱く語っていただきました。

いやー、やっぱりすごいわあ。ソニーの創業者とかホンダ創業者とかもこんなノリだったんじゃないですかね。世の中を変える技術を出す企業の経営者ってのは、やっぱ一流ですね。

かなり刺激を受けました。日産ほにゃほにゃを考える上でも参考になりそうです。

でも、僕任天堂の岩田社長もかなり好きなんですけどネー・・

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