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2008年8月 5日 (火)

企業で働くとき、博士は有利か否か。

 大学院を志望の学生のみなさまにおかれましては、暑い中受験勉強を重ねられているころかと思います。

 さて、理系の学生の方は、多くの方が修士課程に進学されると思います。修士課程の利点は、

・専門分野の基礎知識、経験が積める。

・一般的な研究開発の進め方の基礎を学べる。

・就職の際、研究開発職は学部生に比べ有利。また技術職以外の商社、代理店、金融といったいわゆる「文系就職」の選択肢もある。

ということがあり、比較的抵抗なく修士課程への進路を選ぶ学生が、日本では多いと思います。

さて、では「博士課程」はどうでしょうか。「博士」は大学で得られる最高学位であり、研究者としては一人前と認めてもらえる資格であり、大学で職を得るには必須と一般には認知されております。では、民間で働く場合、「博士号」というキャリアは、有利なんでしょうか、不利なんでしょうか。

僕は修士までで博士は取っていないのですが、半導体メーカーに勤務し、採用にも携わったことのある経験から、ちょっとえらそうですが意見を述べてみます。

結論からいうと、取っておいて損はない、ということです。

はっきりいって、日系のメーカーでは、博士号があるか否かは、現状では待遇にはまったく影響がありません。一応、学位取得までの期間を考慮されて、学士卒の5年目相当からスタートになりますが、その後の給与、出世スピードはまったく関係ありません。なので、日系の大手メーカーでキャリアを過ごす分には、実務経験が不足する分だけ損とも思われます。

 しかし、自分の周囲を見る限り、業務と直接関連するテーマを研究していた実績ある優秀な博士は、入社後即戦力として活躍している人も多いです。開発業務が大規模化して、高学歴の技術者でもルーチンワークをこなす「手足」に割り当てられかねない昨今の半導体開発ですが、業務テーマに詳しい博士は、最初から「頭脳」に割り当てられる可能性が高いように思います。厳しい競争の中で数少なくなった「面白い仕事」にありつける可能性が高いわけです。

また、海外では、技術者や研究者として一人前と認められるには博士が必須ということもよく聞きます。もし、外資や海外で技術者として仕事したいと思うなら、博士号はあったほうが有利になる場面も多いことでしょう。

 それだけでなく、日系メーカーに就職したとしても、これからはますます海外の企業と協業したり、協力しあったりする場面も多くなると思います。また、いつ買収されるとも限りません。そういったなかで、グローバルな舞台で渡り合おうと思ったとき、博士号は役に立ってくれるのではないでしょうか。特に、半導体業界で、何か面白くて刺激のあることをやりたければ、舞台は日本に限らないほうがいいと思います。

 京都大学の先生が、「博士号をとろう!」というテキストをwebsiteに掲載してますが、大筋は同意します。

http://www.nanobio.frontier.kyoto-u.ac.jp/lab/torou.html

一方の就職事情について。一昔前は、博士号を取ると就職先がなくなってしまうというようなことを言われてましたが、最近は企業側も博士に門戸を広げつつあるのではないかと思ってます。これは、競争激化により、少しでも能力の高い人材が欲しいという事情が大きいです。半導体メーカーなら、半導体関連のテーマを研究した工学系ドクターなら、かなり有利なんじゃないでしょうか。直接に半導体のテーマでなくとも、理学系の物理、化学、または数学科でも、優秀でコミュニケーション能力のあるドクターなら、需要は高いと思います。企業の研究所なんかは、ドクターを取っていないと逆に入るのが難しいんじゃないでしょうか。

 しかし、修士から博士課程を志望するのであれば、一つ覚悟を決めて欲しいことがあります。それは、受身ではいけないということです。修士課程までは、モラトリアム気分でもなんとかなりますし、社会に出てからリカバリーが効きます。しかし、博士課程でそのままでは、たとえ博士取得できてもその後のキャリアが危ないと思います。博士を卒業するころには20代後半、学部卒の人間は、社会人5年目で立派に社会で中堅として働いています。彼らに負けない武器を手に入れられなければ、博士の(少なくとも)3年間は無駄になってしまいます。また、博士を取るとなると、やはり就職先はその専門知識、能力を生かすような場所がよいでしょう。積極的に挑むようなテーマがなければ、おとなしく修士で就職したほうがいいかもしれません。

 できれば、其の分野の世界最高の研究室に行きましょう。二流以下の教授の下で学ぶのは、はっきり言って人生の無駄です。海外留学が可能なら、海外で取得してくるというのもいいと思います。博士課程は、専門知識の習得だけでなく、人脈形成の場とも心得ましょう。修士までと違い、ある程度実績も求められます。研究過程で悩み、考え抜くような経験ができれば、貴重な財産となるでしょう。企業は、そういうところも見ています。

 企業に入ってから社会人ドクターを目指すことも可能です。しかし現実問題、研究開発以外の部署に配属になると、かなり取得は難しいです。学生のうちに論文をたくさん出していれば別かもしれませんが・・。

 研究したいテーマがある学生のみなさん、是非ドクターを目指してみてください!

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