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2007年9月17日 (月)

ソニーの半導体売却について

久しぶりに記事を書きます。どーも忙しくなるとさぼりがちになって・・。

半導体の先端デバイス開発を止めたソニーですが、今度は工場売却を決めたようですね。
マスコミでは、すべて内製する垂直統合モデルから、水平分業モデルへの転換の象徴のように言われてますが、ライバルの松下はデバイスから自分達で作る垂直統合で業績が上向いているんですよね。それをおいかけたソニーはなんだかうまくいかなかったと。なんででしょう。

水平分業モデルの象徴みたいな形で、インテルがよく引用されます。インテルは、MPUに特化してパソコンは他の会社に任せ、協力してPC市場を広げることにより大きな成長を遂げたと。ソニーも、上から下までなんでもつくらず、得意なところに特化するのがいいんじゃない?と。でも、久多良木さんはCELLプロセッサを作ることによって、ソニーをインテルみたいな会社にしたかったんだよね。CELLプロセッサをあらゆる家電に埋め込んで、それをネットワーク化し、膨大な計算容量を実現することで、広大なバーチャル空間を生み出し、人類の歴史を塗り替える。そんなビジョンがCELLにこめられていたはず。そのシナリオに乗れば、CELLは広く大量に外販することになるので、自社生産が有利になる、とのストーリーだったのだと思います。一般に半導体生産は、数量が多いほど一個あたりのコストは下がっていくのです。
しかし、とっかかりのPS3が予想ほど売れなかったことで、すべてが崩れたのでしょう。数量がさばけなければ、原価は下がらないし、PS3以外の家電製品にはハイスペックすぎるCELLプロセッサを乗せられるようなニーズも現状では出てこない。インテルアーキテクチャを超えるCPUを作ろうという野心的な試みは、ハイスペック(とハイコスト)ゆえに、使い道がないという皮肉な結果になってしまいました・・・。
そして、久多良木さんは責任をとらされてソニーを首になり、CELLプロセッサは単なるゲーム機の画像処理用プロセッサという位置づけに押し込められて、ソニー戦略の中軸からは外される。
ていう文脈でしょう。

ソニーの社風と規模だからこそできた壮大な実験ですね。2千億以上の投資をしてますからねー。CELLのプロジェクトが進行中は、ソニーの技術者は「CELLがこけたらソニー潰れるから」と嘯いてました。
うーん、諸行無常・・・・・・

おれが思うに、ソニーは久多良木さんの技術信仰ゆえに、アプリケーションよりビジョンと技術に走りすぎちゃったのが根本的な失敗だったと思います。インテルのプロセッサだって、小型電卓を出したいというニーズから出発してますからね。久多良木さんは稀有壮大なビジョンは語ってましたが、PS3以外に具体的にどういう形でCELLを使用した製品を出していくのか、さっぱり分かりませんでした。こんな用途があいまいなデバイスにあんな巨大な投資をして大丈夫なのか?とかなり懸念してたんですがね。
松下の場合は、自社の製品の半導体のプラットフォームをある程度共通化したい、というニーズがあったので、自社生産の意味もあるのでしょう。

経営者はビジョナリーであることが大切ですが、足元もちゃんと見ることも同じくらい大切ですね。

ただし、CELLプロセッサは技術的にはものすごいデバイスだと思うので、時代がついてくれば、ニーズが出てきて息を吹き返す可能性もなくはないと思います。それに、スクラッチから新型プロセッサを作る機会なんてそうはないんで、技術者の教育という観点ではものすごく貴重な機会だったんじゃないでしょうか。そういいう意味で、無意味なプロジェクトではなかったとは思います。

それと、垂直統合モデルと水平分業モデルの話ですが、あんまり二元論で語るのは意味がない気がします。そのデバイスを自社で作ることが競争優位になるのなら作ればいいし、外と協力したほうが競争優位になるのなら、そうしたほうがいい。ケースバイケースです。ただ、ロジック半導体プロセスに関しては、技術的な差異をつけるのが難しい上、微細化にともなって生産のための投資が大きくなり、そうとうの数量を見込める製品がなければ、ペイしません。数量が見込めないなら、生産専門の外部会社(ファウンダリ)に任せたほうが、ビジネス的には有利な判断になる可能性があります。

そんなこんなで先端ロジック半導体の自社生産を止めたソニーの決断は正しいとは思います。ただ、担当技術者は、東芝との合弁会社へ出向扱いになるようですが、戻り先はないので事実上のリストラでしょうね・・。
弊社からも給料とブランド名に惹かれて多数の技術者がソニー様へ転職したのですが、まさか2,3年でこんなことになるとは、彼らの運命も多難ですなー。
あーあ。

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