久しぶりに日本の半導体について書いた書籍を読みました。
大体の半導体業界について書いた本や論文は、「日本は昔はよかったけど今はだめだ!」のパターンで、読むたび「そうなんだけどね・・」とため息をつきます。
前に取り上げた「NEC凋落の本質」やREITI(経済産業研究所)の研究員のレポートもそうです。
マゾなんですかね。
今回もまぁ、そのパターンの本です。
筆者は元日立のDRAMエンジニアで、早期退職勧告にしたがって会社を辞めて社会科学研究者として半導体業界の評論活動を行っている方です。割と名前はよく拝見します。
この本の主張や洞察に関しては、半導体業界に生息している多数のエンジニアにとって、特に目新しいことではありません。「過剰品質、過剰性能である」、「高コスト体質である」、「低コスト化技術が必要である」、「国プロはうまくいかない」などなど、普段から職場や飲み屋で議論しているようなことです。ただ、それを多数の数値データやインタビューの裏づけで説得力を高めているところが筆者の社会科学者としての仕事なんだろうと思います。
驚きはむしろ、2004年の時点で、半導体メーカーの幹部が「過剰品質、過剰性能」を指摘されて怒り出したというくだりでしょうか。アホじゃないでしょうか。中に出てきた、烈火のごとく怒ったという元社長というのは、故○本さんのことかな。DRAMにこだわりが強かったみたいだし。
ただ、筆者は元DRAMのデバイス・プロセス技術者という経歴からか、どうもデバイス・プロセス技術屋の視点から抜け出せていない気がします。低コストの量産技術が重要なことはもちろんなのですが、過剰品質・過剰性能を改めればそれだけで日本の半導体業界は復活するというのは少々甘い気がします。事実、筆者が低コスト技術志向で絶賛している台湾のDRAMメーカーはリーマンショックで軒並み経営危機に陥りました。そもそも、IDMやファウンダリでまともにビジネスになっているのはサムソン、インテル、TSMCくらいでしょう・・。つまり、低コストで作ればいいということではないのです。
一方で90年代後半から躍進したQualcom, Broadcomなどファブレスメーカーについての記述が薄いように思います。彼らは投資負担の重い生産設備を持たないということ以上に優れたマーケティングと経営戦略が勝因であるように思います。
つまり、これから半導体業界で商売するには個別技術よりマーケティングと経営戦略がますます重要になるという他業界では当たり前の話です。
技術は重要だけど、あくまで何かを実現するための手段、基盤です。今までの半導体デバイス・プロセス技術者は、微細化ロードマップに従ってひたすら微細化することを目標にしていました。その技術をどう使うかを考えるのは他人の仕事とばかりに。これが今の技術者の苦境を招いている部分が大きいと思います。ムーアの法則にキャリアを頼れなくなってきたこの時代には、何を世の中に送り出したいのかを考え、その実現手段として技術を開発するという原点を、半導体技術者も見直すべきだと思います。
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