ルネサスの経営危機報道を見て。
毎度毎度不景気な話なんだけど、古巣のルネサスエレクトロニクスの経営危機報道を見て色々と思った。
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/editors.aspx?g=DGXNMSGD28041_28052012000000
一つは経営実行の遅さというのは、一番の致命傷だなということ。よく経営陣がアホだとか言われるんだけど、ルネサスの経営陣はみな頭は人並み以上のはずで、何年も前からとるべき道は分かっていたはずなんだよね。今ルネサスが打ち出している「マイコン集中」というのは、7年も前に現場レベルでもそうすべきだと普通に議論していたことだし、5万人で一兆円の売り上げなんて、どう考えても生産性が悪すぎるなんて、合併前から分かっていたことだし。しかも、部長クラスが5千人もいるという高コスト体質。でも、具体的に動き出したのは、ビジネスが立ち行かないのが数字として見えてから。それじゃ遅すぎるって。しかも、事業選択も中途半端で緩慢。5年前に正しかった選択は、今は正しくないんだよ。ゆっくりやっているうちに競合がキャッチアップして、強みだったはずのものまで、強みじゃなくなっちゃうよ。
二つ目は、親会社。今回の増資要請を「前回のが手切れ金だった」とか言って難色を示しているらしいんだけど、そもそも増資を「手切れ金」と表現すること自体が、ゆるさというか、電機の構造的問題を表していると思う。だって、増資って、贈与じゃなくて、投資でしょ?何千億円も投資するなら、普通の投資家なら、将来の成長計画を厳しくチェックして、取締役を派遣し、コスト構造を徹底的に見直してROEが確実に見込めるように鉈を振るうでしょ。まして、10年間一貫して株価が下がっている企業なんだから。経営計画は投資先のいうがまま、高値で株価を買い取るという外資ファンドの申し出も拒否で、結局株主価値を毀損し続けてお互い損しているという、このぬるい関係は、そろそろ止めるべきでしょ。
そもそも、電機はジャパンディスプレイだ、日本半導体連合だと、すぐ不思議な連合体構想が出てくるし、「税金投入で支援すべきだ」みたいな話になっちゃうけど、単に国に甘えさせているだけだと思う。技術流出が問題だというけど、それって技術への投資に見合ったリターンがないというだけで、「日本発の技術がどうの」というナショナリスティックな議論はナンセンスだと思う。国は、あくまで「環境を整備する」ほうに注力すべきで、あんまり表に出てこないほうがいいと思うよ。
そして、これは単なる感慨なんだけど、昔いた職場の閉塞感はいかがばかりかと思う。僕がいた時期も「将来ないわー」みたいな話は多かったんだけど、その後、技術開発中止で存在意義がなくなる→会社自体が危機、だもんなぁ。エリートエンジニアを自負している分だけ、モチベーションダウンは大きいだろうね。どうしてるかなー。
そんな中で、前職出身のエンジニアの方(被っていないから面識はないけど)が立ち上げたベンチャーがインテルから出資を受けたというニュースは元気が出る話だと思う。
http://news.mynavi.jp/news/2012/05/29/108/
大きく成功するかどうかはまだ分からないけど、企業のブランドや国の支援を当てにせず、自分の考えで自分で人生を切り開くほうが、やっぱり本来の姿だよね。
そういう志を持っているし、面白いアイデアはあるけど、ビジネスとかマネージメントはよくわからんわーというエンジニアと組んで、いつか面白いモノを世の中に出したいなーと思いつつ、日々中国のお客さんと向き合っております。
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